老化を促進、ペニスも精子も傷つけるタバコ

勃起障害のリスクファクターとして、どうしても強調しておかなければならないのが、喫煙です。

各種の疫学調査で、喫煙者は非喫煙者に比べて勃起障害の発症率が高くなる、と報告されているのです。

例えば、米国のマサチューセッツ男性加齢研究(MMAS)では、九年間のフォローを行った結果、喫煙者は非喫煙者の二倍の中程度ないし完全EDを発症したそうです。

また、ヘビースモーカーのED患者に一ヶ月間禁煙させたところ、ペニスの膨張度と硬度が速やかに有意に改善したという、別の研究もあります。

タバコが肺がんの一大原因であることはみんなが知っていますが、私たち泌尿器科の「担当」である腸脱がんも、実は患者の約半分は喫煙が原因で発症するとみられています。

喫煙による酸化ストレスが細胞に慢性的にダメージを与えたり、タバコに含まれる発がん物質が、濃縮されて尿中に貯まるため、慢性的にそれに晒される跨脱ががん化するわけですね。

タバコの煙は、このほかにも様々ながんを引き起こします。

タバコと勃起障害の関係性

では、喫煙による勃起障害は、どうして起こるのでしょうか?

タバコに含まれるニコチンには、末梢血管を収縮させる作用があります。

血管が縮めば、血流は悪くなりますから、勃起に影響を与えます。

また、タバコに含まれる有害物質は、血管の内側の細胞を傷つけます(血管内皮障害)。

それは、心筋梗塞などの冠動脈疾患の引き金になるのとまったく同じ理由で、勃起障害のリスクファクターであると考えられています。

喫煙によって、海綿体やペニスの血管の内皮障害が起こり、やはり血流に問題が発生して、EDになるというわけです。

「百害あって…」の認識はずいぶん高まってきたタバコですが、「喫煙は老化を促進している」と言ったら、驚かれるでしょうか。

百害あって一利なし。タバコの老化作用

そもそも「老化」とは何か?

むろん「見た目」も大事ですが、ここでスポットを当てたいのは、「酸化ストレス」です。

不妊治療を例に取りましょう。

男も女も、年齢が高くなればなるほど、子宝を授かる確率は下がっていきます。

精子は卵子と違って、常に新鮮なものがつくられているから、いくつになっても「若さ」を保っている、と考えるのは大きな間違い。

精子だって、加齢とともに老化が避けられません。

精子の中には(卵子にも)、染色体という、私たちの体の細胞をつくり上げていくための遺伝情報が仕舞われた構造体があります。

年齢を重ねるにつれて、この染色体が徐々に傷つき、精子の機能が低下(すなわち老化)し、その結果、妊娠しづらくなるのです。

こうした老化をもたらす主犯が、テレビの健康番組などでもよく耳にする活性酸素。

周囲の細胞を片っ端から酸化させてしまうため、これが増えると体に「酸化ストレス」がかかります。

俗に言う「体がサビついた」状態ですね。

不妊症患者の男性の精液中には、この酸化ストレスに晒された精子が多い、というデータがあります。

また、酸化ストレスが高じると、精子の数自体も減少してしまうことが分かっています。

酸化ストレスが増加するイコール、体の細胞が老化するということなのです。

そもそも、私たちのかかる病気の九割は、活性酸素に起因するといわれるほど。

だから、できるだけそんな有害物質を外から取り込まないことや、酸化ストレスを生じさせない生活習慣が大事になるのです。

タバコの煙には、その活性酸素が「豊富に」含まれています。

大量の紫外線や激しい有酸素運動などと並ぶ、酸化ストレスの代表的なリスクファクターなのですね。

「勃起を保ちたい」「子どもが欲しい」と思うのなら、タバコときっぱり緑を切ることをお勧めします。

何事もまず院より始めよ

話はちょっと横道にそれますが、私は二O一三年の冬に、米国で聞かれた不妊学会に参加させていただきました。

そこで改めて認識させられたのは、男性不妊症の草新的な治療法というのはそうはない、ということでした。

そんな中、確実に「効く」と分かっているのは、「運動すること」「痩せること」「よく眠ること」そして「タバコを吸わないこと」。

要するに、当たり前の生活習慣の改善、「メタポ対策」なのでした。

先に述べたように、それは勃起障害の治療にも当てはまります。

何事も「まず院より始めよ」ということですね。