気になる勃起改善薬の副作用

ところで、勃起改善薬を飲むと「心臓がやられる」「腹上死の危険性が高まる」といった話を聞いたことがおありではないでしょうか?

結論から申し上げれば、そんなことはありません。

むろん、人によっては服用にあたって注意しなければならないことがありますが、むしろ「心臓にとっていい薬」であることを知っていただきたいのです。

論より証拠、例えばシルデナフィル(バイアグラ)に関する2万人規模の試験では、心筋梗塞の発生率が、シルデナフィル群0.九五人/一OO患者・年、プラセボ群0.九五/一OO患者・年、総死亡率は、同じく前者が0.三七、後者0.五三という結果でした。

医学的には「有意な差が認められない」という評価になります(「ガイドライン」)。

こうした安全性は、他の二つのPDE5阻害薬でも確認されています

そもそも、シルデナフィルは狭心症を適応症に開発が始まった薬です。

狭心症に関しては思ったような効果が出なかったのですが、臨床試験に臨んだ患者に勃起障害の改善が認められたため、そちらにスイッチしたのですね。

実は、勃起改善薬以外に、肺高血圧症(肺動脈の末端が血栓で塞がったり、血管の内側が狭くなったりして、心臓から肺へ血液を送る肺動脈の血圧が高くなる難病)の治療薬としても使われています。

三剤とも、血管拡張作用のあるNOの働きを妨げる、PDE5という酵素の働きをブロックする薬である、と言いました。

このNOもPDE5も、海綿体以外の体のあちこちの血管内皮細胞に存在しています。

つまり、勃起障害の治療のためにPDE5阻害薬を服用すれば、体のそこここの血管を拡張し、血流を促進することになります。

勃起障害の治療を行うことは、心臓や脳の血管のリスクを減らすことにつながりますが、鍵は、血管を広げるNOという物質でした。

事実、バイアグラを使った日のほうが、心疾患死亡率が下がる、という米国食品医薬局の見解もあります。

ただし、注意すべき点があります。まず、狭心症治療に使われる硝酸薬(ニトログリセリン)との併用は危険です。

この薬にはもともと血管拡張作用があるため、PDE5阻害薬をいっしょに飲むと全身の血管を拡張させ、顕著な血圧低下を招くためです。

PDE5阻害薬にも、頭痛、ほてり、消化不良、背部痛(シアリスのみ)といった副作用が、ごくまれに起こることはあります。

ただ、「いずれも軽度一過性」(「ガイドライン」)のもので、です。

むしろ気をつけるべきなのは、「偽造薬」の存在です。

「バイアグラ」「シアリス」などとネットで検索すると、たくさんの販売サイトがヒットします。

でも、そうやって手に入る製品の中には、「まがい物」も紛れ込んでいる、という事実を知ってほしいと思います。

実際には「紛れ込む」どころの騒ぎではなく、ニOO八年人月からO九年四月の間に、日本とタイでネットを介して入手したPDE5阻害薬三剤について解析したら、日本では四三・六%、タイでは六七・八%の頻度でニセモノだった、という調査があります。

オトコの問題、解決のために効かないけれど人畜無害、ならまだいいかもしれません。

中には、汚染物質や不純物、健康被害をもたらす薬物が含まれていた、という報告もあります。

シンガポールでは、糖尿病薬の成分が含まれていたために、飲んだ人が低血糖で死亡した、とも聞きます。

人気の高い薬なだけに、粗悪なニセモノで一獲千金を狙う不届きものも多い、ということでしょう。

危険性を伴うネット通販には、近づかないのが賢明です。

付言すれば、「ガイドライン」には、PDE5阻害薬を飲んでも症状が改善しない、と訴える患者への対応も示されています。

それによると、「まず、患者が正規の薬剤を使っていたかどうかを確認する必要がある」。

それくらい、ネット経由の偽造薬が多く出回っているということでしょうか。

飲み方を誤っていたために、効果が出ないこともあります。

ある研究によれば、シルデナフィルが無効だった患者二三六名を対象に、再教育を行った結果、九八名(四一・五%)が有効に転じたそう。

脂っこい食事後の服用、性的刺激をしていない(PDE5阻害薬を飲んだら、自動的に勃起するわけではありません!)、数回しか試していない、といった「不適切な使用方法」が、失敗の原因の八一%を占めました。

その後、三剤すべてで同様の結果が相次ぎ、初期失敗例の救済率は、四一・五1五九%に達しています。

やはり、きちんと医師に処方してもらい、服用法などの指導も受けるのが大事であることを、こうしたデータは示しているように思います。

「おしっこ」にも効く勃起改善薬

二O一四年四月、前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤「ザルティア」が発売されました。

一般名はタダラフィル。そう、勃起改善薬「シアリス」と同じ成分なのです。

加齢により前立腺の細砲が増加し、肥大すると、おしっとの出が悪くなります。

タダラフィルなどPDE5阻害薬に、その状態を改善する可能性のあることは、以前から知られていました。

腸脱や前立腺部の血流を良くすることなどが理由だと考えられています。

このメカニズムで排尿障害を改善するタダラフィルには、前立腹部尿道を広げて尿を出しやすくするαブロッカーに比べ、大きなメリットがあります。

それは、性的に現役で勃起障害のある男性の性機熊が温存できること。

研究では、一二週間にわたって、タダラフィル5ミリグラムを一日一回服用した男性のグループは、射精及びオーガズムに加えて、性交の全体的満足度及び勃起障害に明らかな改善がみられました。

一方、αブロッカーを服用したグループでは、性交満足度、勃起機能の明らかな改善はなく、射精、オーガズム、全体的満足度に関してはプラセボ(薬効成分を含まない偽薬)を飲んだグループよりも劣ったのです。

αブロッカーには、以前から射精障害の副作用が指摘されていました。

それで、満足度が低下したのではないか、とも考えられています。

他にも様々な研究がありますが、副作用が少ないのがタダラフィルの強みのようです。

勃起障害を治すために、ペニスの血流を改善させようとしたことが、好都合な副産物を生んだ格好。

勃起障害と排尿障害の「ニ重苦」に悩む男性には、朗報となりました。

ただし、ザルティアは保険診療が適応となるため勃起障害の治療のためだけに処方するととはできせん。

排尿障害の検査をしっかりと受けた人のみに投与することができます。

勃起障害の方はシアリスを専門医にて処方してもらって下さい。